解像度

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光学顕微鏡の解像度は観察者やカメラによって個別の物体として識別できる標本上の2点間の最短距離であると定義されます。この概念を下の(図1)に示します。この図では、標本からの点光源が顕微鏡の中間像面でエアリーディスクとして現れています。

図1 - エアリーパターンと解像限界

対物レンズの解像限界とは、回折パターンの中の2つの近接したエアリーディスクを識別できる能力を指します(図参照)。中間像面付近の回折パターンを三次元的に表現したものは、点像分布関数として知られています(図1の下部に表示)。標本の画像は、エアリーパターンを形成する近接した点光源によって表され、二次元および三次元で表されます。

光学顕微鏡における解像度は主観的な価値になる場合があります。何故なら、高倍率の場合には、対物レンズの性能上解像されていても、イメージがぼやけて見える可能性があるからです。対物レンズの分解能は開口数によって決まりますが、顕微鏡の光学系全体の総解像度はサブステージのコンデンサーの開口数にも依存します。システム全体の開口数が大きくなるほど、解像度は向上します。

最大の解像度を実現するには、顕微鏡の光学系を正しく調整することも重要です。正確な円錐光を形成して標本を照明するためには、コンデンサーの開口絞りを対物レンズの開口数に合わせて調整する必要があります。標本のイメージングに使用される光の波長もまた、顕微鏡の解像度を決定する要素です。短い波長の光は、長い波長の光よりも、微細構造をより高精度に解像できます。これらの開口数、波長、解像度の関係は、いくつかの式で表されます。

Formula 1 - Numerical Aperture, Wavelength, and Resolution

解像度 (r) = λ/(2NA)

Formula 2 - Numerical Aperture, Wavelength, and Resolution

解像度 (r) = 0.61λ/NA

Formula 3 - Numerical Aperture, Wavelength, and Resolution

解像度 (r) = 1.22λ/(NA(obj) + NA(cond))

ここで、rは解像度(解像可能な2つの物体間の最小距離)、NAは顕微鏡の開口数の総称、λはイメージング波長、NA(obj)は対物レンズの開口数、NA(cond)はコンデンサーの開口数を指します。式(1)と式(2)は乗数が異なり、式(1)では0.5、式(2)では0.61となっています。これらの式は、数多くの要因(光学物理学者が生み出したさまざまな理論計算を含む)を基にして対物レンズとコンデンサーの動作について説明したものであり、何らかの一般物理法則による絶対的な値と考えるべきではありません。実際には、共焦点顕微鏡や蛍光顕微鏡などでは、解像度がこの3つの式による限界値を超えることがあります。また、標本のコントラストが低い場合や、照明が不十分であるなどの要因によって、解像度が低下することもあります。多くの場合、rの本当の最大値(550 nmの中間波長の使用では約0.25 µm)や1.35〜1.40という開口数は、実際には実現していません。次の表(表1)は、対物レンズの倍率と収差補正ごとの解像度(r)と開口数(NA)の値を一覧にしたものです。

表1 - 対物レンズの収差補正による解像度と開口数

対物レンズの種類
プランアクロマートプランフルオールプランアポクロマート
倍率開口数解像度(µm)開口数.解像度(µm)開口数解像度(µm)
4x0.102.750.132.120.201.375
10x0.251.100.300.920.450.61
20x0.400.690.500.550.750.37
40x0.650.420.750.370.950.29
60x0.750.370.850.320.950.29
100x1.250.221.300.211.400.20  


顕微鏡が完全に調整されており、対物レンズがコンデンサーと適合している場合、対物レンズの開口数を式(1)と式(2)に代入すると、結果的に式(3)が式(2)に約分されます。注意すべき事実としては、解像度を決定するのは開口数と照明光の波長のみであり、倍率はこれら式のどの係数としても現れることはないということです。

すでに述べたように(そして式からもわかる通り)、光の波長は、顕微鏡の解像度における重要な要素です。波長が短いほど解像度が高くなり(rの値が低くなる)、その逆も当てはまります。光学顕微鏡の最大の解像力を実現するには、有効なイメージング波長で最も短い近紫外光を使用します。標本の細部を解像する能力という点では、近紫外光に続くのが青、その後が緑、最後が赤になります。多くの場合、顕微鏡では白色光を使用して標本を照明します。可視光スペクトルは、緑色光の主な波長である約550ナノメートルを中心としています(私たちの目は緑色光に最も敏感です)。表1の解像度値の計算にもこの波長を使用しています。これらの式では開口数の値も重要で、開口数が高いほど解像度も高くなります。固定開口数(0.95)の場合の、解像度に対する波長の効果を表2に示していますが、波長が長いほど解像度が低いことがわかります。

表2 - 解像度と波長の関係

波長(nm)解像度(µm)
360.19
400.21
450.24
500.26
550.29
600.32
650.34
700.37

顕微鏡の分解能は、光学系の最も重要な特性であり、標本の細部を識別する能力に影響します。これまで説明したように、解像度を決定する第一の要因は、対物レンズの開口数ですが、解像度は標本の種類、照明の干渉、収差補正の程度などにも依存します。また、顕微鏡の光学系や標本自体におけるコントラスト強調法などの要因にも影響を受けます。最終的な分析では、解像度は顕微鏡の有効倍率や標本細部の知覚限界に直接関係しています。

Contributing Author

Michael W. Davidson - National High Magnetic Field Laboratory, 1800 East Paul Dirac Dr., The Florida State University, Tallahassee, Florida, 32310.

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